多動症発生の仕組み解明

細胞レベルでの記憶、学習のモデルとして、神経回路網のシグナル伝達の過程での、受容体以降のシグナル伝達機構(リン酸化,脂質修飾などの翻訳後修飾)やシナプス前部におけるシナプス可塑性など、 不明な点もまだまだ多い中で、多動症のメカニズムに関して群馬大と独ゲーテ大の共同研究チームが興味深い実験結果を発表しました。

多動症発生の仕組み解明=診断、新薬開発に期待―群馬大など

行動を抑制できず、落ち着きのない状態になる多動症が発生する仕組みを、群馬大と独ゲーテ大の共同研究チームがマウスの実験で解明した。多動症の診断や 症状を抑える薬の開発に役立つ成果と期待される。欧州分子生物学機構の専門誌(電子版)に発表した。
研究チームは、脳内のタンパク質「CIN85」に着目。正常なマウスでは、体を動かす情報を伝えるため、神経伝達物質ドーパミンが神経細胞の間でボール のように放たれる。神経細胞の表面にある受容体がグローブの役割を果たしてドーパミンを受け止めると情報が伝わり、体が動き始める。CIN85は、受容体 を細胞内に引き込み分解することで、運動を抑制する機能を果たしている。
一方、CIN85をなくしたマウスでは、ドーパミンを受け止めた受容体が細胞表面にとどまるため、運動を抑制できなくなる。マウスの実験では運動量が約 30%増加するなど、多動性の特徴が現れたという。
群馬大の下川哲昭准教授は「今回の解明は、ドーパミンの量を調整する薬などの開発にもつながる」と話している。

2年ほど前、群馬大学のチームがCIN85ノックアウトマウスを作成して、総移動量,移動速度,折り返し数,新規環境探索度等の行動解析を行って、非ノックアウトのものに比べて有意に他動表現が見られる結果を出していました。

今回は、その中でもドーパミン受容体の抑制の異常についての結果だと思われます。CIN85の調整機能が欠損することで神経伝達物質受容体のエンドサイトーシスが低下し、他動に結びつくようですね。

結合蛋白質CIN85はポリープからがん細胞への調節機能などでも名前が出てくることがありますが、近年いろんなところで新たな効果や特徴が発見され続けています。今後も、この分野で面白い発見が相次ぐかもしれませんね。