ナルコレプシーの原因と対策

睡眠障害というと眠れない、眠りが浅いタイプのものが思い浮かびますが、ナルコレプシーは「居眠り病」とも呼ばれる眠ってしまう、傾眠傾向の睡眠障害です。

日中に我慢できないほどの眠気に襲われ、普通であれば絶対に眠らないような場面(スポーツの試合中や商談の会話中など)で眠ってしまうことがあります。

また意識はあるのですが、感情が(主に楽しい、嬉しい方向に)高まったときに急に膝、腰、顎、頬、まぶたなどの筋肉からガクッと力が抜けて弛緩してしまいます。

睡眠発作

普通の人でも前日に寝不足だったり、お昼ご飯の後や退屈な単調作業などでは眠くなってしまいます。ですがナルコレプシーの場合は、充分に睡眠をとっていても、特に眠くなる理由が無くても、瞬間的に眠りに落ちてしまいます。

日中に居眠りをしやすいことから、周囲に怠けている、やる気がない等の誤解を受けることがありますが、本人は大変辛く、生活に重大な支障があります。

レム睡眠関連症状

レム睡眠とノンレム睡眠という言葉を聞いたことがあるでしょう。詳しい説明はここでは省きますが、通常のぐっすり眠っているパターンがノンレム睡眠、周期的に訪れる夢を見やすい眠りがレム睡眠です。

普通の人は、通常眠りについてからノンレム睡眠をしばらく過ごしレム睡眠に移行しますが、ナルコレプシーで急激に眠った場合はいきなりレム睡眠に突入することが多く見られます。

このため寝入りばなに鮮やかで怖い夢を見ることが多かったり(入眠時幻覚)金縛りのような「声が出ない、体が動かない」恐怖感を味わうことになります。(睡眠麻痺)

また喜んだり楽しい感情が高まった時に姿勢を保っている筋肉の力が抜ける(情動脱力発作)などナルコレプシー特有の睡眠パターンからレム睡眠関連症状と呼ばれています。

この独特の症状から、現在では他の傾眠傾向の障害(睡眠時無呼吸症候群等)とは区別されています。(以前は同一視されることも多かった)

他の症状

レム睡眠関連症状などからも寝つきは良くても夜間に覚醒しやすく、また熟睡感も得られにくいために夜間熟眠障害がつきまといます。

また自動症という症状もあります。日中活動している間に眠りに落ちて、意識は途切れているのに体は直前までの動きを無意識で実行してしまいます。(自動行動)

病気のためにミスや失敗を繰り返す生活を長期間送ったり、情動脱力発作を避けようと感情の左右される人付き合いを避けていくうちに、独特な受け身の消極的正確に変化することがあります。(ナルコレプトイド性格変化)

原因

オレキシン(ヒポクレチン)という物質の欠乏が有力視されています。脳の視床下部から分泌される人間を目覚めた状態に保つ働きの神経伝達物質です。

近年ではTrib2抗体がオレキシンのニューロンを破壊してしまうことから「ナルコレプシーは体内の免疫系の攻撃で誘発される」というデータも出てきています。

対策

最近では少しずつ社会的にも認知されてきていますが、それでもナルコレプシー患者への誤解は根強くあります。また頑張って眠らないように我慢する、前の日にたくさん寝てみる等も根本的な解決にはなりません。

何より注意しなければならないのが、日中に意識を失うように眠りに入る点です。車の運転や機械の操作、精密作業の途中に睡眠発作が起これば重大な事故に繋がります。自分も周囲の人も危険にさらしてしまうことは避けるべきでしょう。

少しでも自覚症状があるようなら、医療機関を受診して相談してみましょう。睡眠障害に詳しい神経内科、精神科、クリニックなどを探して治療を受けるようにしてください。(主に投薬での治療が多いようです。アンフェタミン、デキストロアンフェタミン、メチルフェニデート、モダフィニル、ピモリンなど)