季節感と不眠症、うつ病

日照時間や季節が心の問題に影響を与える、というポイントで真っ先に思い浮かぶのが北欧や北米での極端に変化するケースです。

実際に北欧では日照時間が少なくなる冬季に鬱や不眠症が多くなる報告があります。以前は「それは極端なケースで日本などでは季節に影響されない」とされてきましたが近年少しずつ日本でも増加傾向にあるようです。

秋はメランコリーな季節

昔から秋には物悲しく、憂鬱な気分になるとされてきましたが、これは直接の季節変動ではなく、紅葉や落ち葉をみたり冬が近づいてくる季節感の問題だとされていました。

夏のピークを過ぎた後での脱力感、疲労感、一日が短く感じられ生活のパターンが定着しにくい、気候がどんどん変化することで慌ただしく急かされる感覚が抜けない、等です。

これだけなら病気でもなく単に憂鬱な気分を味わうだけなのですが、以前から精神的不調を抱えていた場合には中途覚醒(夜間に何度も目覚める)や不安感が抜けなくなったりすることもあります。

冬季うつ病

秋も後半から冬季にかけて冬季うつ病が多く見られるようになります。

季節の変化に起因する「季節性感情障害」(季節性うつ病)の一種なのですが、80年代に発表された比較的新しい病気です。

通常のうつ病と違い比較的症状が軽く、自分が鬱状態であると認識していない人も多く、春先になると自然に回復、治癒してしまうために不調のまま我慢して冬を過ごす人も少なくありません。

眠気が強くなるのに睡眠に満足できなかったり甘い物がほしくなったり、冬季うつになりやすい人には独特のパターンが見られるようです。欧米では女性が多いのに日本では男性が多いというのも特徴です。

また近年では室内を中心に生活している人の中には一年を通して冬季うつ病のような症状がでる人もいます。カーテンを閉め切っていたり外出する機会が極端に少ない場合は要注意です。

寒い季節を乗り切る

対策のポイントは明るくする、暖かくする、満腹にすることです。

普段の生活でも部屋の電気を明るい物に変えてみたり、日中はきちんとカーテンを開け、できれば外に出て直接日光を浴びます。

治療としては高照度光療法といって専用の数千ルクスの照度の照明装置を使うこともあります。

また知らず知らずのうちに気温は下がり体と心にストレスがかかっています。風邪をひかなければいいというものではありません。こまめに衣服や寝具の温度調節をして負担を少なくしてください。

秋には食欲が出るものです。これは寒い時期を迎える生物としては当たり前の反応なのですが、ダイエットなどで食事制限している人は急激に心理的な負担がかかることになります。

生活リズムが崩れるほどの極端なダイエットでは、ストレスがかかるばかりで効果も上がりません。更にリバウンドすれば全てが水の泡です。何事もホドホドに。

動物は秋から冬に冬眠の準備として栄養を蓄え活動が低下していきますが、人間は冬眠せずに少し無理をして活動しているわけです。春になれば活動は活発になりますが、それまでは無理のないペースで秋冬を乗り切ってください。